築42年。和室、土壁など和風建築のテイストも残る住宅。H様のイメージを「設計の上田さんはやりたいイメージを理解してくれて、進めやすかった」と設計士との打ち合わせで、"残したい和"と"削ぎ落す和"の部位をそれぞれ選択。予算のことも考え、「こだわりぬく部分」と「あきらめる部分」も考え抜きました。「あきらめる」というのは、後から自身で手を加えられるところは職人に施工を発注しないということです。
結果、まずは間取り変更。日当たりの悪い北側にリビング、キッチン、南向きに和室2間という間取りを大幅に変更。家族が過ごすLDKを日当たりのよい南側に移しました。天井をはがして梁はそのまま見せる表し梁に。そこまでは一般的ですが、H様邸は2階の床の下地を手を加えずそのまま天井として見せているほか、古く傷がついている柱も一部を除いてそのまま再利用。倉敷市の補助金を受け耐震改修も行っているため、土壁には耐震用合板をはめ込み、その上から粒を吹き付け、土壁を再現。キッチンの天井のダクトをあえて強調するなど理想と資金両面を考慮した結果、"インダストリアル"な空間に仕上がりました。
そのインダストリアルな空間を構成しているのが、ご主人がDIYした家具や塗装部分。テレビボードやダイニングテーブル、ローテーブルなどはすべて一から手作り。ダイニングテーブルの椅子は実家にあった古い椅子を持ち帰り、木の部分を茶系に塗装。座面を張り替えました。また、間取り変更とあわせて、「どうしても譲れなかった」というもう一つのこだわりが床の無垢材。トイレ、洗面をのぞく1階すべての床は無垢のレッドパインをセレクト。無塗装で張り、ご主人が着色されています。このレッドパインの色味が手作りの家具をアメリカンヴィンテージ感を演出。「木と石、鉄を使うことで、古くなっても"劣化"ではなく、深みとしてインテリアの彩りにしたい」と10年後、20年後を楽しみにされています。
まだまだ完成ではないというH様邸。「オシャレ過ぎて、まだ自分の家という実感がない」と奥様は感動されていますが、「終わることはずっとないでしょうね」というご主人。
現在は洗面所の建具を制作中です。次に何を創るか、当分先の予定まで決まっているそうです。
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